株式会社ファーストステージCOO 岩間隆一さん

10年後に残る住宅会社であるために。
設計のプロに「接客のプロ」の視点を
掛け合わせるという選択

「営業マンを置かず、設計士がお客さまと直接対話する」。一見、理想的な家づくりの形ですが、そこには「設計士は営業のプロではない」という大きなハードルがありました。この課題を、外部知見である「レビュー」を通じていかに突破したのか。茨城県水戸市、株式会社ファーストステージ岩間COOの言葉から、その軌跡を辿ります。

「設計力」を生かすための「営業力」

──まず、今の「設計士と直接つくる」というスタイルに至るまでの歩みを教えてください。

創業当時は社長と僕で年間8〜10棟ほどを回していましたが、2017年頃には50棟規模まで急成長したんです。その時にふと「このままでは僕たちが倒れてしまう、会社が存続できなくなる」という強い危機感を抱いたんですね。

50年、100年と持つ家を造る以上、会社もそれ以上に存続し続けなければならない。そこで、特定の個人の力に頼るのではなく、組織として動くシステムへと大きく舵を切りました。

住宅業界は一般的に営業マンが契約の窓口になりますが、彼らは必ずしも設計や現場の納まりを知る「家づくりのプロ」ではありません。

一生に一度の夢をプロではない方に委ねる構造に疑問があったからこそ、私たちは設計士がお客さまと向き合うスタイルにこだわっています。

震災を経て性能や安全性への追求も強め、現在は年間100棟ペースですが、約10ヶ月もお客さまに待っていただいている状態です。

無理に規模を追わず、自社の品質管理部隊のキャパシティに合わせた「身の丈」の品質を何より大切にする。それが、100年続く会社を目指す僕たちの揺るぎないスタンスですね。

「上司の言葉」よりも伝わる、プロの視点と他社の刺激

── 設計士が最前線に立つ上で、クリアすべきハードルもあったのではないでしょうか。

一番のハードルは、設計士という人種の特性そのものです。設計士になる人というのは、「芸術家肌」の人が多い。基本的にお客さんの要望を聞くより「僕のデザインを見てくれ」となりがちだし、何より「営業はやりたくない、口下手なんだ」という人がほとんどなんです。

でも、市場では百戦錬磨の「営業のプロ」たちがしのぎを削っています。競合他社さんは、僕たちの家づくりの話をお客さんに聞かせる前に、営業手法を駆使して受注してしまおうと仕掛けてくる。

そうしたプロの戦略を前に、口下手な設計士が丸腰で戦うのは、あまりにハードルが高いのが現実でした。

── そこで、外部の知見を取り入れようと判断されたのですね。

設計士が大手さんのプロ営業と対等に渡り合うには、設計のスキルだけじゃなく、確かな「接客のノウハウ」を植え付けていかなければならないと考えました。

官谷さんの噂は、現役で活躍されていたころから聞き及んでいて、その手法は、まさに僕たちが求めていたものでした。

正直なところ、一番の決め手は「このノウハウを地元の競合さんにやられたら、うちは相当厄介なことになるな」という直感的な恐怖に近い危機感でしたね(笑)

── 設計のプロに、営業のプロの視点を掛け合わせるという発想ですね。

設計のプロが、「営業のストーリー」を武器として持てば、最強になれるはずだと思ったんです。実際に官谷さんのノウハウを実践してみたところ、設計士だけの集団であっても、今までになく効率良くお客さんに思いが刺さっているな、という手応えを1年目から感じ始めました。

レビューで「なぜ負けるのか」が明確に

── レビューシート導入で、どのような手応えがありましたか?

一番の衝撃は「いかにお客さんのことを知らなかったか」を突きつけられたことです。自己流では、本来必要だった情報の3分の1も聞き出せておらず、そもそも「何を聞くべきか」という発想すら持てていなかった事実に驚かされました。

例えば、ご両親の納得を得ることの重みや、予算の優先順位を明確にする考え方です。これらを適切なタイミングで確認する重要性を教わったことで、土壇場での大逆転や不毛な金額競争を防げるようになりました。

「勝って不思議あり、負けて理由あり」と言いますが、レビューによって「なぜ負けたのか」が明確になったのは非常に大きいですね。導入前は28%程度だった歩留まりが現在は35%まで伸び、数字上も7〜8%の確実な成長を記録しています。このノウハウがなければ、今も年間50棟規模で停滞していたかもしれません。

「身近なプロ」であり続けるために

── これからの住宅業界はどう変わっていくとお考えですか。

── これからの住宅業界はどう変わっていくとお考えですか。

住宅市場はこれから10年ほどで、今の半分くらいまで縮小していくと見ています。そうなると、これまで100棟やっていたビルダーも50棟になるし、小さな会社は存続そのものが危うくなるでしょう。

ただ、その厳しい10年を乗り越えて生き残った会社には、逆に注文が集中して忙しくなる時代が来ると読んでいます。

今は「大手だから」「ブランドがあるから」という理由で高いお金を出す時代から、身近なプロに頼もうという傾向に少しずつ変わってきています。

だからこそ、僕たちは社員一人ひとりを「設計のプロ」であると同時に「接客のプロ」へと育て上げ、徹底的にプロ化することに特化していかなければなりません。

結局、やっていることは同じことの繰り返し、PDCAを回し続ける泥臭い作業です。

ですが、外部の本物の力(インプライの支援)も借りながら、設計と接客の両輪を高いレベルで回し続けていけば、10年後も僕たちは地域に必要とされる「身近なプロ」として残っている。そう確信しています。

Summary

STEP
「設計士が最前線に立つ」ことの構造的課題

営業を置かず設計士が最前線に立つスタイルだが、営業手法の欠如が課題だった。社長や岩間氏個人の資質に頼らない組織的な接客ノウハウを構築すべく、外部導入を決定した。

STEP
独りよがりな接客から、論理的なストーリー構築へ

レビューシートにより重要情報の把握や聞くべきタイミングが具現化された。設計士自らが受注までのストーリーを描けるようになり、自己流を脱却した効率的な接客へ変容した。

STEP
歩留まりが7〜8%向上し、年間100棟体制へ

研修とレビューシートの徹底により、成約率が約28%から35%へと大きく伸長した。全拠点の案件共有も社員の視座を高める貴重な場となっている。

STEP
「身の丈」を守り抜くためのブラッシュアップ

市場縮小を見据え、規模より歩留まり(効率)を重視している。「設計」に「接客」のプロ視点を掛け合わせることで大手と戦える組織を構築し、PDCAを回して次世代の生き残りを目指す。

編集後記:
「設計士自らが接客を極める」という挑戦が、着実に結実していることを誇らしく思います。特に、設計士の皆様が「教えを欲し」、プロの技術として接客を吸収しようとする高い向上心には、常に刺激をいただいています。今後も「身近なプロ集団」として地域を支え続ける皆様をバックアップしてまいります。